お茶屋の「心意気」込め 文化として「初荷」継承 (辻利一)


《城南新報2017年1月5日付紙面より》
 
 日本緑茶発祥の地で銘茶づくりを続けている宇治茶製造販売の老舗・㈱辻利一本店(宇治市宇治蓮華)は今年も4日に恒例の『初荷』行事を執り行い、宇治田原工場から北は宮城県、南は大分県の茶専門店やメーカー計14社に1216㌔、282万円相当の茶を発送した。
 同店の創業者・辻利右衛門は幕末の動乱によって存亡の危機にあった宇治茶の名声を復興させた人物。玉露製造システムの礎を築き、保存性の高い茶びつを考案したアイデアマンとしても知られ、伝統的な栽培・加工技術を守りながら、新しい宇治茶の可能性を切りひらいてきた。
 そして、1860年の創業以来157年、この茶文化を次代へ伝承すべく良質茶づくりに励んできた同店の5代目社長・辻俊宏氏(55)が、もう一つの『文化』、そして『お茶屋の心意気』として引き継いでいるのが『初荷』儀式。
 年中無休、24時間営業、欧米化などの流れにのまれ、日本的な風習が薄れていく中、取引先にも協力を求め、今年も鮮やかに染め抜いた「初荷」の文字が宇治田原町湯屋谷の工場を飾った。
 出荷割合(金額ベース)は抹茶の原料となる碾茶が62%、煎茶33%、玉露・かぶせ類3%、川柳・ほうじ茶・玄米茶など2%となっている。
 一方、同社は昨年9月28日に、創業地である「宇治橋通り」の中ほどに「辻利・宇治本店」をグランドオープン。こだわりのお茶を中心に宇治を発信するフラッグシップ「旗艦店」として再現した。
 古民家のたたずまいを残した店内の一角には昔ながらの座売りの場も設け、活気のある空間を演出。落ち着いた風情の茶房、創業地にあった灯籠、庭石、蹲(つくばい)を配したテラス席も併設しており、辻社長は「宇治でお茶に親しんだ体験を家庭に持ち帰ってもらいたい」と茶業の未来を見据える。
 その老舗が「茶文化を伝承するぞ」という気概を込めた…この日の初荷式。昆布と梅干が入った大福茶で乾杯し、明日への希望も添えたお茶をトラックに積み込んだ。
 

茶文化を伝承する心意気を胸に晴れやかな表情で初荷をトラックに積み込む
茶文化を伝承する心意気を胸に晴れやかな表情で初荷をトラックに積み込む