「初荷」お茶屋の「心意気」 辻利一再び宇治橋通りで


《城南新報2018年1月5日付紙面より》
 
 宇治茶製造販売の老舗・㈱辻利一本店(宇治市宇治妙楽)は、今年も4日に恒例の『初荷』行事を執り行い、日本緑茶発祥の地で銘茶づくりを続ける宇治田原工場から、1043㌔、384万4000円相当の荷を積み込み、宇治橋通りの「辻利・宇治本店」から、全国の茶専門店やメーカー計19社に発送した。
 同店の創業者・辻利右衛門は幕末の動乱によって存亡の危機にあった宇治茶の名声を復興させた人物。玉露製造システムの礎を築き、保存性の高い茶びつを考案したアイデアマンとしても知られ、伝統的な栽培・加工技術を守りながら、新しい宇治茶の可能性を切り開いてきた。
 そして、1860年の創業以来158年、この茶文化を次代へ伝承すべく良質茶づくりに励んできた同店の5代目社長・辻俊宏氏(56)が、もう一つの『文化』、そして『お茶屋の心意気』として引き継いでいるのが『初荷』儀式。
 1991年までは妙楽の旧・本店で。そのあと、2005年までは宇治壱番に設けた本店で行い、宇治蓮華に移転後は宇治田原工場から発送していたが、2016年9月にフラッグシップ宇治本店を再現。13年ぶりに宇治橋通りでの出荷セレモニーとなった。
 年中無休、24時間営業、欧米化などの流れにのまれ、日本的な風習が薄れていく中、取引先にも協力を求め、鮮やかな「初荷」の文字で彩られた旗艦店。
 古民家のたたずまいを残した店内の一角には昔ながらの座売りの場も設け、活気のある空間を演出。落ち着いた風情の茶房、創業地にあった灯籠、庭石、蹲(つくばい)を配したテラス席も併設しており、その風情が伝統行事のムードを高めた。
 今回の出荷割合(金額ベース)は抹茶の原料となる碾茶が67%、煎茶16%、玉露・かぶせ類14%、川柳・ほうじ茶・玄米茶など3%。
 フレーバーとしても人気が定着した抹茶は前年比5%増。ティーパック加工の受注により玉露が前年比で10%以上増えた。
 宇治の老舗が「茶文化を伝承するぞ」という気概を込めた初荷式。結び昆布と小梅が入った大福茶で乾杯し、トラックのお茶に明日への希望も添えた。【写真】